「MIDIの基礎知識」


 いまや電子楽器を扱う上ですっかり定着し常識となったMIDI。みなさんはこのMIDIの仕組みを本当に理解しているでしょうか。なにを今更と言わずここで確認と復習の意味も含めてMIDIについて再確認してみましょう。



1、MIDI信号の構成

MIDIとは、Musical Instrument Digital Interfaceの略で、俗に「ミディ」と呼ばれています。
MIDIは、楽器同士を相互に接続するためのインターフェイスで、楽器の国籍もメーカーも種類も問わない画期的なシステムです。
MIDIの間でやりとりされる信号はオーディオ信号ではなく電子機器にしかわからないいわゆるデジタル信号です。
普段我々が使っている数字表現は10で位が変わるいわゆる10進法ですが、MIDIをはじめとするデジタルの世界では2進法、16進法で信号の種類を表現するのが一般的です。
これは、デジタルが2つの異なる状態(1か0か)しか持たない為、2進法が最もデジタルを表現しやすい方法なのです。
MIDI信号はパルス(電圧)の「ある」「ない」によって伝達されます。この最小単位をビットと呼び、MIDI信号は8ビットで構成されています。(下図参照)














つまり0と1が8つ組になっているということです、このまとまりを1バイトと呼びます。そして8ビットの場合組み合わせとしては「00000000〜11111111」までの0〜255まで表現できることになります。
ただしまとまりのある数字として見た場合8桁というのは見にくい上、扱いにくい為、前4ビット、後4ビットに分けてまとめたのが16進数というわけです。(下図参照)






















これら2進数、16進数は10進数と区別するために2進数は末尾にB(Binary Deicmal)、16進数は末尾にH(Hexer Decimal)をつけて表現されるのが一般的です。
更に1バイトで構成されるMIDIメッセージは、メッセージの種類を伝達するステータス・バイトと、情報に伴うデータを伝達するデータ・バイトに分けられます。
MIDIではこの2つのメッセージを区別するために第7ビットをフラグ(旗)にみたてて、第7ビットが1の場合そのMIDIデータはステータス・バイトとして機能し、第7ビットが0の時はそのMIDIデータはデータ・バイトはとして機能する仕組みになっています。
MIDIデータがデータ・バイトの場合、8ビットの内第7ビットはフラグとして使用されてしまう為、実際には7ビットしか使えないことになりますので、7ビットで表現できる範囲は00H〜7FHに限定されてしまいます。
7FHを10進数に変換すると127となります。つまりこれがMIDIで送れる1バイト・データの最大値となるわけです。MIDIのノート・ナンバーやベロシティーなどの値が0〜127を越えることができない理由はここにあります。

2、MIDIの概念

さて、それではこうしたMIDI信号を受ける楽器側の仕組みはどうなっているのでしょうか。
MIDI楽器は必ずMIDIインターフェイスを備えています。当然デジテル信号を認識できる機能もあるわけですからMIDI楽器はれっきとしたコンピューターを搭載していると言えます。
MIDI信号を受信して音にするまでのプロセスを下図に示します。














このプロセスはデジタル・ピアノであろうがDTM音源であろうが、MIDIの付いている機器であれば基本的には変わり有りません。
それでは、MIDIの概念、内容についてお勉強してみましょう。
MIDIには必ずチャンネルという概念がありますが、MIDIチャンネルはTV放送を例にとるとわかりやすいでしょう。
普段我々が見ているTV放送は様々な放送局から複数のいろいろな放送が送り出されています。
各家庭のTVアンテナはそれら全てを受け取り、TV(受信機)の方で見たいチャンネルを選び、ひとつの放送だけを見るということをしているわけです。
MIDIチャンネルもこれと同じで、放送局にあたるのが演奏用ソフト等の演奏させる側(マスター)となる機器、受信機にあたるのがDTM音源等の演奏される側(スレーブ)となる機器と考えればよいのです。
御存じのようにMIDIでは1系統(1本のMIDIケーブル)で同時に1〜16のチャンネルを扱うことが出来ます。

3、MIDIのモード

前項で述べたチャンネルに追従してMIDIにはモードという概念が派生してきます。
モードにはオムニ、ポリ/モノ2つの考え方があります。
オムニはオンかオフで、オンにするとマスター側からの全てのチャンネルの情報を受け取ります。
オフにすると指定したチャンネルの情報だけを受け取ります。
ポリ/モノはひとつのチャンネルで演奏情報をポリフォニック(複音)で伝えるか、モノフォニック(単音)で伝えるかを決めるものです。
これらを複合するとMIDIには4つのモードがあることになります。(下図参照)
















4、MIDI信号の種類

さて、一口にMIDI信号といってもいろいろな種類があります。
それを図式化したのが下図です。




















個々に付いて簡単に説明してみましょう。
MIDI情報はMIDIチャンネルごとに別々の楽器に伝えられるチャンネル・メッセージとMIDIチャンネルの設定に関係なく伝えられるシステム・メッセージに分かれます。チャンネル・メッセージには主に演奏表現に関する情報が含まれています。

4ー1、ボイス・メッセージ

ボイス・メッセージの中には以下のの情報が含まれます。

4ー1ー1、ノート情報

どの鍵盤がどれくらいの強さ(早さ)で弾かれたか、どの鍵盤が離されたかを伝えます.。

4ー1ー2、プログラム・チェンジ

音色ナンバーを切り換えます。

4ー1ー3、コントロール・チェンジ

ボリューム、モジュレーション、ホールド・ペダルなどの情報が含まれます。

4ー1ー4、アフター・タッチ

鍵盤を押さえたあと、更に鍵盤を押すことでビブラートなどの効果をかけます。

4ー1ー5、ピッチ・ベンダー

シンセのピッチ・ベンダーの操作を伝えます。

4ー2、モード・メッセージ

モード・メッセージは前述したスレーブ側のモードを強制的に切り換える情報です。
最近では無いとは思いますが、音源によっては電源をオンにすると音源のMIDIモードがモード1(オムニ・オン、ポリ)で立ち上がる物があります。
自動演奏ソフトなどを使ってDTM音源等でアンサンブル演奏させる場合、音源のMIDIモードはモード3(オムニ・オフ、ポリ)にしなければなりません。
この為自動演奏ソフト等の多くは電源をオンにするとMIDI OUTからスレーブ側をモード3にするモード・メッセージを送る仕組みになっています。
従って、MIDIケーブルのつながっている楽器の電源をオンにするときは、スレーブ側からオンにする習慣をつけると良いと思います。

4ー3、エクスクルーシブ・メッセージ

これはMIDIの中で共通化できない情報を送るためのメッセージで、主に音色データなどの情報がやりとりされます。
もう1台のシンセに音色を転送したり、音色パラメーターを変更したりする使い方をします。
もちろん形式は各メーカー独自のもので、基本的には、同一メーカーの同一機種の間だけでやりとりするものです。
MIDIメッセージの中では最も応用範囲の広いメッセージです。

4ー4、コモン・メッセージ

コモン・メッセージの中には以下のの情報が含まれます。

4ー4ー1、ソング・ポジション・ポインタ

自動演奏の演奏位置を伝達します。

4ー4ー2、ソング・セレクト

演奏したいソング・ナンバーを選択します。

4ー4ー3、チューン

音源対してチューニングを命令します。

言うまでもありませんが、これらのメッセージはそれに対応する機能のある機器に対して有効です。
自動演奏機能などのない普通のシンセや音源などには無意味なメッセージです。

4ー5、リアルタイム・メッセージ

自動演奏装置等の同期演奏のためのメッセージです。
これもコモン・メッセージ同様、従来のシンセなどには無意味なメッセージです。

5、MIDIインプリメンテーション・チャート

MIDIインプリメンテーション・チャート(MIDIインプリ)という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
これはMIDIの付いている機器には必ず付いています。
通常は機器の取扱説明書の末尾に表で表記されているはずです。
これは、その機器がどのようなMIDI情報を送受信できるかをまとめたものです。
書式フォーマットはMIDI自体世界の統一規格なので、海外の機器でも国内の機器でも表記言語が違うだけで見方は全く同じです。
MIDIインプリには、表左側にMIDIの様々な情報が書かれています。
送信、受信の欄では、送受信できるかが「○」「×」で表されています。もし楽器の設定によってこの対応が変わる場合はその内容が備考に書かれています。
では各情報についてもう少し詳しく見てみましょう。

5ー1、ベーシック・チャンネル

電源オン時のチャンネルと設定可能なチャンネルを表しています。

5ー2、モード

電源オン時のモードとモードの切り替えができるかどうかなどを表しています。

5ー3、ノート・ナンバー

送受信できるノート・ナンバーの範囲を表しています。

5ー4、ベロシティー

ノート・オン、ノート・オフ2つの項目があり、ベロシティーに対応するかどうかを表しています。

5ー5、アフター・タッチ

アフター・タッチを送受信できるかを表しています。キー別とチャンネル別2つの項目がありますが、俗にアフター・タッチと呼んでいるのはチャンネル別の方で、ノート・オンしている全ての音に効果がつきます。

5ー6、ピッチ・ベンダー

ピッチ・ベンダーが送受信できるかを表しています。

5ー7、コントロール・チェンジ

ボリューム、モジュレーションなどが送受信できるかを表しています。異なる機種や電子ピアノなどを接続する場合は特にこの部分をチェックしましょう。

5ー8、プログラム・チェンジ

音色の切り替えが送受信できるか、また、音色番号の何番までを送受信できるかを表しています。

5ー9、エクスクルーシブ

エクスクルーシブを送受信できるか、またどのようなデータが送受信できるかを表しています。
最近のDTM音源では送受信できるエクスクルーシブ・メッセージが膨大なため、別表で表記されているケースがほとんどです。

5ー10、コモン

ソング・ポジション・ポインタなどに対応しているかを表しています。

5ー11、リアル・タイム

同期演奏させる為の情報の送受信を示しています。クロックは同期させるための情報、コマンドはスタート/ストップ/コンティニューの操作を伝える情報です。

5ー12、その他

ここでは主に、MIDIシステムのトラブルを防ぐための情報に対応しているかを表しています。

5ー13、備考

ここでは楽器の設定によって機器が変化する場合、その働きなどを表しています。

このMIDIインプリを読むことは、目的を絞った機器選びにもつながります。必ずマスターした方が良いかと思います。

MIDIでは、これだけたくさんの情報のやりとりがたった1本のケーブル(中味は5本)でできるのです。いかに画期的な規格であるかがおわかりいただけるでしょう。

簡単ではありますがお勉強はおしましです。
MIDIに関しては、更に詳細を解説していると小冊子程の量になってしまします。
今後徐々にお勉強していくことにしようと思います。