「エフェクターの基礎知識4 その他のエフェクター」


エフェクターとは言うまでも無く入力された原音に対して何らかの処理を施して音を変化させる機械のことを言います。近年ではDTM音源やデジタルミキサー等に内臓されるようになり実に手軽にエフェクターを使えるようになりました。
前項までは比較的一般的なエフェクターを個別にお勉強しましたが、ここではエフェクターの最終回としてその他にどのようなエフェクターがあるのか簡単にお勉強してみようと思います。



1、コーラス

もっともファンが多い?エフェクターと言えるでしょう。近年のDTM音源にはリバーブと並んで必ず内臓されていますし、使い方も簡単で効果が分かりやすい点でも一般的なエフェクターと言えるのではないでしょうか
このエフェクターはディレイの出現と同時に出てきたエフェクターです。
理由は簡単!実はコーラスのエフェクト効果はディレイの応用で生み出すことが出来ます。
コーラスの効果としては、その名の通り、一つの音源をあたかも複数で鳴らしているようなアンサンブル効果が得られます。
ディレイを使っての具体的な作り方としては、ディレイ・タイムを20〜40msec位にセットして、ディレイ音と原音の時間間隔を周期的に変化させるためにモジュレーションをやや大きめに取ります(1Hz前後)。そしてディレイ音と原音を同レベルで出力します。これだけでコーラス効果の出来上がりです。
ただ近年のDTM音源等ではコーラスとして独立したエフェクトがありますから、わざわざディレイを使って作る必要はないでしょう。
一口にコーラスと言っても、より複雑なアンサンブル効果により音の厚みを作り出す3相コーラスなどもありますし、ステレオによる左右の広がりを与えるディメンジョン効果もコーラスの一部と言えます。
コーラスについてはエレピ、ストリングス、ギター等々、使い方は自由ですが、コーラスを使うことは当たり前のようになってしまっていますので、新鮮味には欠けるかもしれません。
誰もが使っているエフェクトだけに逆にかけない方が新鮮だったりもします。そのへんの使い分けはよく考えたいものです。
下図はコーラスの原理です。



























2、フランジャー

最近ではめっきり聞かなくなったエフェクターです。
これもコーラス同様、ディレイの出現と同時に一般的になったエフェクターです。
古くはジェット・マシンなんて呼ばれていましたが、もとはと言えば、同じ信号を録音したテープ・レコーダー2台を使って、リールに触るなどして双方の再生時間を微妙にズレらして作られていた効果なのです。
効果としてはかなり強烈で、独特のウネリを発生させます。アナログ.シンセのレゾナンスを上げたり下げたりしている感じです。
この効果をディレイを使って作る方法としては、ディレイ・タイムを1〜15msec位にセットしてフィードバックを多めにします。そして深めのモジュレーションをかけてディレイ音と原音を同レベルで出力します。これだけです。ほとんどコーラスと同じですが、コーラスと異なる点はディレイ・タイムが短くなっていることと、モジュレーションがやや深めになっていること位です。
ただフランジャーもコーラス同様、近年の録音機器等ではフランジャーとして独立したエフェクトがありますから、わざわざディレイを使って作る必要はないでしょう。
フランジャーのパラメータ自体コーラスとほぼ同じですので、設定によってはコーラス効果やディレイのダブリング効果を生み出す事も可能です。
また、フランジャー独特のメタリックな音を生かしてイコライザーの代わりに使う方法も聞いたことがありますが私自身はやったことがありません。
フランジャーについてはコーラス同様、幅広い使い方が出来ますが、クセの強いエフェクトだけに使い過ぎははかえって逆効果になってしまいますので注意が必要です。
下図はフランジャーの原理です。




















3、フェイズ・シフター(フェイザー)

これは一時は誰もが使っていたエフェクターですが、近年ではこれを使ったサウンドは皆無となってしまいましたが、独特の効果は捨てがたいものがあります。
原理的には、原音に位相をずらした音をミックスすることによって生じる位相差がフランジャーとは違った独特のウネリを生み出します。
コーラス、フランジャー同様、幅広く使う事が出来ますが、高次倍音を多く含んだ音にかけるのがより効果的です。例えばギター、クラビ、エレピと言ったような音色です。
それと、フェイザーの位相のズレですが、当然360度では全く意味がありませんし、180度では原音とエフェクト音が打ち消し合ってしまいますので、45度、60度、120度といった角度でズラすのがベストです。
下図はのフェイズ・シフター原理です。


























4、エキサイター

出てきた時は、何とも不思議なエフェクターだなという感がありました。
が、原理がわかってしまえばどうということはありませんでした。
単に欠落した高次倍音を付け加えるというエフェクターです。具体的にはボーカル等に使われますが、今まで後方に引っ込んでいた音がグッと前に出てきます。
イコライザーと違う点は、原音自体があまり損なわれずに済むということです。
例えば、何らかの理由で原音の高次倍音が損なわれてしまった場合、当然その音は全体の後方に引っ込んで聞こえてしまいます。この場合、イコライザーである程度補正は出来ますが、原音に高次倍音が含まれていなければほとんど役に立ちません。このような時にエキサイターを使うと音の輪郭がハッキリとして、しかも原音自体がほとんど損なわれずに済みます。
具体的に楽器を挙げると、ベースのチョッパーを強調したり、ギターのピッキング・ノイズを強調してアッタク感を付けたり出来ます。
ただ、気を付けなければいけないのが、この効果に慣れ過ぎると、全ての音にエキサイターをかけなければ気が済まなくなってきます(私の経験では・・・笑)。結果、個々の音が前へ出ようとするため全体のバランスはめちゃくちゃということになりかねません。使い方には注意が必要です。 下図はのエキサイターの原理です。




















もちろんエフェクターの種類はこれだけではありません。ここまではまあ一般的であろうと思われるエフェクターについてお勉強しました。
現在では様々な機器のデジタル化が進み、エフェクターも様変わりしています。中には聞いたこともないような名前のエフェクターもあったりします。これらについては残念ながら取り扱い説明書を見ながら自分の耳で聞いて修得していくしかありません。
何ごとも日々経験を積んでいくことが必要だと思います。


今回のお勉強はこれで終わりです。